
初訪問の方は、はじめまして。
他の記事から見てくださっている方は、こんにちは。
さらっと納得を目指す本サイト「さらとく」。
第14回記事となります。
以前の記事で書かせていただいた通り、
2021年最初のテーマは「十二の功業」についての一連の記事となります。
その第二回となる今回は、前回の最後にありますように
第二の功業「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」について紹介させていただきます。

どうして「十二の功業」やってるの?
決して成り行き任せで始まったわけではありません。
数々の無理難題を課されながらも律儀に勤めを果たし続けたのには、
ヘラクレスなりに切実な事情があってのことだとされているそうです。
以前の記事でも書かせていただきましたが、
ヘラクレスの抱える事情というのは、端的に言えば「罪滅ぼし」です。
女神ヘラの介入により正気を失ったことで起こしてしまった事件について、
その罪を償うべく光明神アポロンの神託を受けて始まったのが
「十二の功業」と呼ばれる難行だったそうです。
・・・が。ここで問題発生。
「十二の功業」の切っ掛けとなった光明神アポロンの神託ですが、
その内容はちょっと雑なものだったらしく、
罪滅ぼしに関して「具体的に何を為すべきか」については言及してなかったそうです。
神託で告げられたのは
- 誰の下で
- いくつの勤めを果たすか
という2点。これだけ。
つまり「十二の功業」には、
神託を下した光明神アポロンとは別に人間の雇い主が存在します。
雇い主として指定された人物の名前は、エウリュステウス。
当時ミケーネ&ティリンスという土地を支配していた王とされる人物です。

このエウリュステウス王ですが、実はヘラクレスとの間にかなりの因縁のある人物で
ヘラクレスに対して恨みがあるわけでは無いものの
ヘラクレスが健在だと気が休まらない
という実に複雑な立場であったとされているそうです。
そんなエウリュステウス王なので、
ヘラクレスに10個、好きに仕事を課していいよ byアポロン神
とのお墨付きをいただいてしまったことで、
これ幸いと私情挟みまくりで難題を課すことになります。
要するに、エウリュステウス王の課す勤めには
表向きの名目と個人的な裏事情がもれなくセットで存在していたそうです。
今回の目的

(表)
レルネーの沼に住み着いた水蛇(ヒュドラ)を退治してきて。
第二の勤めも、前回同様に怪物退治です。
先の「ネメアの獅子」もそうでしたが、
この頃は「シンプルに強い怪物の相手をさせる」みたいな方針があったみたいですね。
とは言え、単純に強い怪物という意味では前回の「ネメアの獅子」で既に頓挫していますので、
今回はいくらか趣向を変えてきています。
そんなエウリュステウス王の思惑はこちら。

(裏)
武器が通じない怪物に素手で勝つとかおかしくない?

(裏)
・・・じゃあ、毒。
触れることも出来ない猛毒持ちの怪物ならさすがに無理でしょ。
今度こそヘラクレスが負けますように。
レルネーの水蛇(ヒュドラ)とは?
ざっくり言えば、読んで字のごとくヘビです。
今回の場合、レルネーという土地の沼に住み着いて人々を襲っている存在だとされています。
「今度はヘビか」と言いたいところですが、そこはやっぱりヘラクレス。
そんな「ヘビ」の一言で済むようなマイルド仕様のはずもなく。
特徴①:怪物テュポーンの血筋
「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」は、神話の中で突然変異のようにして登場してきた訳ではなく、
一応の出自(のようなもの)が伝わるタイプの怪物とされています。
そのルーツは、ギリシャ神話にて「怪物の父」とも呼ばれる怪物テュポーン。
主神ゼウスを相手に、世界規模どころか宇宙規模の激戦を繰り広げたことで知られる、
「最大最強の怪物」とまで語られた怪物界隈屈指の大御所です。
そんな怪物テュポーンを親に持つのが、今回の「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」だと言われています。
前回ご紹介させていただいた「ネメアの獅子」も同様の出自の持ち主で、
その点で考えるのなら、この両名は兄弟関係に当たるとも言えますね。
特徴②:多数の首
「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」は、外見的には「巨大なヘビ」とされているそうです。
ヘビである以上、その体長が人体より長くても不思議ではありませんが、
このヒュドラは体長だけでなくその厚みも結構あったらしく、
絵画などを見ると、対峙するヘラクレス(基本的にムキムキ)よりも横幅が大きいことも割とザラです。
加えて、一般的なヘビとの明確な違いとして、首の数が1本ではありません。
正確な数は出典によって変わりますが、1つの胴体に対して
9本 or 100本の首が生えた怪物であったと言われています。
特徴③:不死身の生命力
実はこのヘビ、死にません。
厳密には「完全無欠の不死身」という訳ではなく、
再生力が凄い首と、本当に不死である1本の首という組み合わせとされています。
具体的には、仮に首が9本ある場合だと
- 中央の1本:不死
- 左右の8本:どんどん再生する(1本切ったら2本生える)
という形になっていたそうです。
この特性もあって、ヘラクレスが戦った際は
首を刈ることは出来ても、刈った数以上に首が再生する
という底なしのジリ貧に追い込まれたと言われています。
特徴④:解毒不能な猛毒
「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」の持つ最も危険な特徴です。
巨大な体躯&多数の首という実に怪物らしい特徴を持つヒュドラですが、加えてもう一つ
吸い込むだけで死に至る猛毒の息を吐く
という性質を持っていたと伝えられています。
これに関してはヘラクレスであっても有効な解決策は無かったようで、
ヒュドラと戦う際、常に口と鼻を布で覆うことで予防するという手を採っていたそうです。
つまり解毒手段無し。
vs.レルネーの水蛇(ヒュドラ)
そんな訳で、前回に負けず劣らずの強敵と戦うことになったヘラクレス。
毒に気を付けて口と鼻を布で覆って戦ってみたものの、
斬れど潰せど首の再生は止まらず、むしろどんどん増える始末。
そこで対策を思いついたのが、今回同行していた甥のイオラオス。
イオラオスは、ヘラクレスが切った首の断面を松明で焼くことによりそれ以上の再生を防いだのだといいます。
そしてとうとう残る首は1本となりましたが、こちらは不死身。
倒すにも倒せない相手でしたが
Q.ヒュドラの最後の首は不死身で倒せません。どうしますか?
A.埋めます(`・ω・´)+
というわけで、不死身の首を切り落とした上に巨大な岩を落とすことで
ヒュドラの退治に成功したヘラクレスでした。
その後の顛末
無事にヒュドラを退治したヘラクレスでしたが、今回は甥のイオラオスの助力があったため
「ヘラクレスひとりで退治していない」
と言われ、ノーカウントとして扱われました。
また、ヘラクレスはこの時退治したヒュドラの血(猛毒)を自分の矢に塗ることで
最強の毒矢として、以降自分の武器に活用したのだといいます。
一方、退治されたヒュドラの方ですが、こちらは天に昇って「うみへび座」になったのだそうです。
また一説には、この時ヒュドラに協力させるべく女神ヘラが巨蟹カルキノスを差し向けましたが、
ヒュドラ退治の邪魔だったのか、あっさりヘラクレスに踏みつぶされたとか。
巨蟹カルキノスは後に、その勇気を買われたことで天に昇って「かに座」となったのだといいます。


ギリシャ神話において、星座の誕生に関わることで有名なヘラクレスですが
今回だけで「うみへび座」と「かに座」の2つが誕生しているんですね。

加えて、ヘラクレスの毒矢を生み出す要因にもなっていますし、
今回のヒュドラは神話的にも結構なキーパーソンだったみたいです。ヘビですが。
以上、今回は「十二の功業」より
「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」について紹介させていただきました。
次回は、第三の功業「ケリュネイアの鹿」についてとなります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
また他の記事でお会いいたしましょう。
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