
初訪問の方は、はじめまして。
他の記事から見てくださっている方は、こんにちは。
さらっと納得を目指す本サイト「さらとく」。
第15回記事となります。
以前の記事で書かせていただいた通り、
2021年最初のテーマは「十二の功業」についての一連の記事となります。
前回の最後にありますように、今回は
第三の功業「ケリュネイアの鹿」について紹介させていただきます。

どうして「十二の功業」やってるの?
決して成り行き任せで始まったわけではありません。
数々の無理難題を課されながらも律儀に勤めを果たし続けたのには、
ヘラクレスなりに切実な事情があってのことだとされているそうです。
以前の記事でも書かせていただきましたが、
ヘラクレスの抱える事情というのは、端的に言えば「罪滅ぼし」です。
女神ヘラの介入により正気を失ったことで起こしてしまった事件について、
その罪を償うべく光明神アポロンの神託を受けて始まったのが
「十二の功業」と呼ばれる難行だったそうです。
・・・が。ここで問題発生。
「十二の功業」の切っ掛けとなった光明神アポロンの神託ですが、
その内容はちょっと雑なものだったらしく、
罪滅ぼしに関して「具体的に何を為すべきか」については言及してなかったそうです。
神託で告げられたのは
- 誰の下で
- いくつの勤めを果たすか
という2点。これだけ。
つまり「十二の功業」には、
神託を下した光明神アポロンとは別に人間の雇い主が存在します。
雇い主として指定された人物の名前は、エウリュステウス。
当時ミケーネ&ティリンスという土地を支配していた王とされる人物です。

このエウリュステウス王ですが、実はヘラクレスとの間にかなりの因縁のある人物で
ヘラクレスに対して恨みがあるわけでは無いものの
ヘラクレスが健在だと気が休まらない
という実に複雑な立場であったとされているそうです。
そんなエウリュステウス王なので、
ヘラクレスに10個、好きに仕事を課していいよ byアポロン神
とのお墨付きをいただいてしまったことで、
これ幸いと私情挟みまくりで難題を課すことになります。
要するに、エウリュステウス王の課す勤めには
表向きの名目と個人的な裏事情がもれなくセットで存在していたそうです。
今回の目的

(表)
ケリュネイアの山中にいる雌鹿を捕まえてきて。
ちなみにこの鹿、アルテミス様の聖獣だから生け捕りね。
「十二の功業」第三の勤めは、聖獣の生け捕りです。
後の展開を考えると、どうもこのあたりからヘラクレスより強い存在を探すのではなく
勤めに失敗してもらう方針にシフトしたっぽいです。
実際、以降の勤めを見渡しても
「ネメアの獅子」や「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」以上に強そうな相手はほとんど登場しません。
実は初手からガンガン切り札使ってたみたいですね。
そして、強敵という意味での手札がほぼ枯渇したエウリュステウス王。
その思惑、今回はこのような感じとなります。

(裏)
猛毒持ちで不死身の怪物に勝つとか絶対おかしいよね?
しかも猛毒を利用して自分の武器(矢)作ってるし・・・。

(裏)
こうなったら、狩猟神アルテミスの聖獣を狙わせよう。
取り逃がしたらアウト(失敗)。
うっかり狩ってもアウト(神罰)。
手を出したことがバレるだけでも多分アウト(神罰)。
今度こそ隙は無い・・・ハズ。
ケリュネイアの鹿とは?
ケリュネイアという土地の山に住む巨大な雌鹿です。
これまでの勤めに登場した面々と違い、怪物的な存在ではないらしく、
鋭い爪や頑丈な毛皮、致死の毒や不死身の肉体といった直接的な脅威は備えていなかったそうです。
そのため、先の2体と比べるとそれほど強敵とも思えない「ケリュネイアの鹿」ですが、
実はこの鹿、「十二の功業」に登場する面々の中では、
後述する特徴のためトップクラスにヘラクレスを振り回した存在でもあったみたいです。
特徴①:黄金の角と青銅の蹄(ひづめ)
「ケリュネイアの鹿」は、鹿として巨大な体躯を持っていましたが、
それに加えて、角が黄金で、蹄(ひづめ)が青銅で、それぞれ形作られていたそうです。
本来はそれほど目立たない色合いの部位が金属となっていて、
その上、鹿自体も立派な体格ということなので、遠目にはさぞ目立ったことだと思われます。
怪物的なものではなかったらしいですが、それでも超常的な存在には違いなかったのでしょう。
特徴②:矢よりも速く駆ける脚
ヘラクレスを振り回した要因その①。
超常の存在であっても怪物ではない「ケリュネイアの鹿」は、
戦いに関して有用な特徴をさほど持っていません。
せいぜい金属製の角と蹄(ひづめ)が武器になる程度です。
しかし、戦いにはあまり向いていなくても追いかけっこであれば話は別。
その俊足は「矢より速く駆ける」と語られる程で、
ギリシャ神話において狩猟を司る女神であるアルテミスでさえ捕獲を諦めたとされているそうです。
同じことはヘラクレスにも当て嵌まった様で、
狩りならともかく生け捕りを目的とするならば、この俊足をまともに追いかける必要があります。
これにはヘラクレスも相当苦労したらしく、
その後ギリシャ中を徒歩で追い回す羽目になったとされているそうです。

ちなみにこの鹿ですが、実は同種の鹿が他にも4体ほどいたと言われています。

これら5体の鹿を捕まえようとしたのが狩猟神アルテミスでしたが、
中でも頭抜けて足の速い1体だけは捕まえることができなかったとか。
※他の4体は捕まりました。

この時に逃げ切った1体が、後に「ケリュネイアの鹿」と呼ばれる個体だとされています。
特徴③:狩猟神アルテミスの聖獣
ヘラクレスを振り回した要因その②。
ギリシャの神々には、それぞれに縁深い動物(=聖獣)がいるとされています。
これら聖獣は、当該の神にとってはまさしくシンボル、自身を象徴する存在と言えます。
それだけに、聖獣に手を出す行為は所縁ある神に対する不敬と捉えられるそうです。
ちなみに、これは「手を出す」という点が問題なので、
故意か偶然かという部分はあまり考慮されないみたいです。
と言いますか、故意なら論外です。
そんな手を出すだけでもアウトな聖獣なので、狩ってしまった場合はもはやお察し。
そして同時に、それこそが雇い主であるエウリュステウス王の狙いでもあったそうです。

要するに、
「もう怪物じゃ手に負えないから、神の怒りを買ってしまえ」
という思惑だったんですね。
vs.ケリュネイアの鹿
まぁ、対決するわけではないのですが。
Q.矢よりも速く走る鹿を捕まえたいです。どうしますか?
A.えっと・・・地道に追いかけます(´・ω・`)
抜群の脚を誇る「ケリュネイアの鹿」の生け捕りに挑むことになったヘラクレスでしたが、
さすがに数々の制限は軽くなかったらしく、
結局ギリシャ中を一年かけて追い回すことになったと言われています。
最終的には、鹿が川で水を飲んでいる隙をついて何とか生け捕りに成功したのだとか。
丸一年もご苦労様でした。
その後の顛末
その後、捕えた「ケリュネイアの鹿」を抱えて帰還しようとしたヘラクレスでしたが、
たまたま狩猟神アルテミスと双生児である光明神アポロンに見つかってしまい、
「聖獣である鹿を狩ったのか」と大目玉をくらったそうです。
しかし、
- 自分が欲したのではなく、勤めを果たすために狙っただけ
- 生け捕りにしたので、ちゃんと生きている
- 後で絶対に返す
と、諸々しっかり説明したことで、アポロン神(とアルテミス神)の怒りは収まり、事なきを得たとされています。
説明大事。
以上、今回は「十二の功業」より「ケリュネイアの鹿」について紹介させていただきました。
次回は、第四の功業「エリュマントスの猪」についてとなります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
また他の記事でお会いいたしましょう。
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