
初訪問の方は、はじめまして。
他の記事から見てくださっている方は、こんにちは。
そして、あけましておめでとうございます。
さらっと納得を目指す本サイト「さらとく」。
第12回にして、2021年の初記事となります。
新年の始まりと言うことで、何をテーマとしたものか悩みましたが。
やはり、節目であれば原点回帰が王道。
と言うわけで、第12回となる今回は、筆者推しの人物にまつわる武勇伝。
ギリシャ神話の英雄ヘラクレスより「十二の功業」について書かせていただきます。

以前の記事でも書かせていただきましたね。
内訳が破格な「ヘラクレス用罰当番×12」です。
12個あるエピソードを今回だけにまとめるのも大変ですし、
何より推しエピソードとしてじっくり書きたいのが正直なところ。
というわけで、今回から複数回に分けて「十二の功業」をご紹介いたします。

もちろんですが、内容自体はさらっとするつもりです。

それでも、わざわざ元旦から扱おうというのは

やはり、推しゆえです。
概要
以前の記事で少し紹介させていただきましたが、
「十二の功業」というのは英雄ヘラクレスが為した十二の勤めの総称です。
内訳がトンデモ難易度ミッションで構成されていることもあって
専らその困難さがクローズアップされやすいテーマですが、
後述するように、本質的には「勤め」であり、ヘラクレスにとっての「罪滅ぼし」です。
とは言え、その発端についてはヘラクレス自身にさほど非が無いことや、
「勤め」でありながらも文句なしの武勇伝を打ち立てているあたり、
ギリシャ神話屈指の英雄にして苦労人たるヘラクレスらしいと言えばらしい逸話でもあります。
経緯
以前の記事で紹介させていただいたように、
英雄ヘラクレスはギリシャ神話の主神ゼウスの息子として生まれました。
そのこと自体は特に問題無いのですが、
主神ゼウスの妻である女神ヘラからは、その生まれを理由に
悪い意味で目を付けられる羽目になったそうです。
その結果、ある時ヘラクレスは、女神ヘラの差し金により
正気を失って暴走してしまったことがありました。
程なく正気を取り戻したヘラクレスでしたが、
暴走の結果については償いの必要があるということで、
神託により10の勤めを果たすよう言い渡されたのだといいます。
これが、後に「十二の功業」と呼ばれる一連のストーリーの発端とされているそうです。

つまり、本来であればヘラクレスに課されたのは「10の勤め」でした。

しかし、その10回のうち2回について、
依頼主から物言いが入ってノーカウントとなってしまいます。

結果、元の「10の勤め」に2回分が追加され「十二」となったそうです。
内訳
十二の功業①:ネメアの獅子
『ネメアの谷に住み着く獅子(ライオン)の毛皮を持ち帰れ』
第一の勤めは、分かりやすく怪物退治です。
「ネメアの獅子」とは、ネメアという土地の谷に住み着く強大な獅子(ライオン)の怪物で、
どんな武器でも傷つかない程に頑丈な毛皮と、
その毛皮でも引き裂ける程に鋭い爪を持っていたとされています。
以前の記事でも書かせていただいた通り、
絵画などで描かれるヘラクレスの被った毛皮は
この時に得たものとされることもあるそうです。
十二の功業②:レルネーの水蛇(ヒュドラ)
『レルネーの沼に住み着く水蛇(ヒュドラ)を退治せよ』
第二の勤めも、やっぱり怪物退治です。
意外とたくさんいるみたいですね、怪物。
「レルネーの水蛇(ヒュドラ)」とは、レルネーという土地の沼に住み着く水蛇の怪物で、
9本とも100本とも言われる多数の頭(その内1本は不死)と、
解毒不能な猛毒を持った存在とされているそうです。
以前の記事でも少し書かせていただきましたが、
英雄ヘラクレスの誇る最強の武器である猛毒の矢は
このヒュドラの血を鏃に塗ったことで得られたと言われています。

ちなみに、ヘラクレスはヒュドラ退治を無事に達成したものの、
退治に際して他者の手を借りたことを理由に、今回はノーカウントとされました。
十二の功業③:ケリュネイアの鹿
『ケリュネイアの山中に放たれた鹿を生け捕りにせよ』
第三の勤めは、少し趣向を変えて動物(聖獣)の生け捕りです。
「ケリュネイアの鹿」とは、ケリュネイアという土地の山中に放された巨大な雌の鹿で、
黄金の角と、青銅の蹄、そして矢よりも速く駆ける脚力を持っていたとされています。
特段の怪物というわけでもないので脅威の度合いとしては先の2体よりマシなのですが、
今回は退治ではなく生け捕りという指示のため、
地道に追いかけるしか手が無いという点で、ヘラクレスをして苦戦したみたいです。
十二の功業④:エリュマントスの猪
『エリュマントス山に住む大猪を生け捕りにせよ』
第四の勤めは、前回に倣ったのか怪物の生け捕りです。
今回は特に聖獣だったりはせず、単純に付近を荒らす怪物とされているそうです。
「エリュマントスの猪」とは、エリュマントス山という高地の山に住み着く大猪で、
獰猛な性格と、巨大な体躯を持ち、付近の田畑や村を荒らしていた怪物と言われています。
「巨体で凶暴な怪物」という点で危険な部分はあるものの、
これまでの相手のように追加で頭抜けた特徴を持つわけでもなかったため、
生け捕りに関しては比較的あっさり達成できた回だったみたいです。
十二の功業⑤:アウゲイアスの家畜小屋
『アウゲイアス王の家畜小屋を一日で掃除せよ』
第五の勤めは、再び趣向を変えて小屋のお掃除です。
「アウゲイアスの家畜小屋」とは、アウゲイアスという名の王様が飼っていた
多数(一説には3000頭とも)の牛がいる牛小屋のことです。
牛の数もすごいのですが、それ以上に
30年超に渡って一度も掃除されたことが無い
という恐るべき管理体制で知られていたとされています。
これを一日で掃除してしまえというのが今回ヘラクレスに課された勤めでした。
ちなみに、「一日で」と期限を切られたことについては何らかの事情があったとかではなく、
単純に仕事の難易度を上げるためだったそうです。
要するに無茶ぶりですね。

そんなこんなで厄介な条件こそつけられたものの、
最終的にヘラクレスは一日で小屋の掃除を終わらせることに成功します。

しかし、掃除に取り掛かる前に「一日で掃除を終えたら報酬が欲しい」と
アウゲイアス王に要求していたことで、
「報酬を求めるようでは罪滅ぼしにならない」としてノーカウント(2回目)とされました。
十二の功業⑥:ステュムパリデスの鳥
『ステュムパリデスの怪鳥たちを退治せよ』
第六の勤めは、久しぶりの怪物退治です。
「ステュムパリデスの鳥」とは、ステュムパロス湖という湖付近に住んでいたとされる鳥の怪物で、
翼と爪とくちばしが青銅で出来ていたと言われる存在です。
また、怪物であっても鳥としても性質はそのままらしく、
単一の個体であることが多い怪物の中では珍しく同種で集団を形成している怪物でもあったそうです。

つまり、ヘラクレスにとっても珍しい「怪物の群れ」との戦いですね。

今回ヘラクレスは、退治に際して大きな音を立てるための道具を
鍛冶神ヘパイストスに用意してもらっていますが、
退治そのものは独力だったためか、無事に勤めとしては有効と判断されたそうです。
十二の功業⑦:クレタの牡牛
『クレタ島で暴れる牡牛を生け捕りにせよ』
第七の勤めは、またも趣向を変えて怪物の生け捕りです。
「クレタの牡牛」とは、当時クレタ島という場所で暴れ回っていた牡牛で、
元々は海神ポセイドン由来の神秘的な牡牛だったのが、
クレタ島を治める王のやらかしで怪物化してしまったという経緯があるとされています。
怪物化したとは言え一応は王の所有する牛ということを考慮したのか、
あるいは海神ポセイドン由来ということを気にしたのか、
経緯は不明ながら、今回の怪物化した牡牛は生け捕りとするよう命じられたそうです。
十二の功業⑧:ディオメデスの怪馬
『ディオメデス王の飼っている馬を奪い取れ』
第八の勤めは、前回に続いて生け捕りです。
前回は怪物化した牛でしたが、今回は怪物っぽい振る舞いの馬が対象となります。
「ディオメデスの怪馬」とは、当時のトラキアという土地を治める王ディオメデスが飼っていた
巨大な体躯と凶暴な性格を持つ馬のことです。(一説には4頭いたとか)
その性格と、何より主であるディオメデス王がそうするように仕込んでいたことで、
何も知らない旅人を襲う怪物のような馬として知られていたとされています。
十二の功業⑨:アマゾンの女王の腰帯
『アマゾンの女王が持つ腰帯を手に入れろ』
第九の勤めは・・・お使い、でしょうか。
退治や生け捕りではなく、指定された物品を入手することが目的の勤めです。
「アマゾンの女王の腰帯」とは、女性だけで構成される部族アマゾン(またはアマゾネス)において
女王となった人物が所持していたという軍神アレス由来の腰帯のことです。
当時はヒッポリュテという人物の手にあったそれを入手するに際して、
ダメ元ながらも交渉を持ち掛けたヘラクレスでしたが、
予想に反してアマゾン一同からは歓迎され、穏便に腰帯を譲り受ける話がまとまったそうです。
直後に横槍が入るまでは。

ちなみに、今回の勤めに登場する女王ヒッポリュテは、
勇猛な部族の一員ではあっても、怪物とかその手の類とは無縁な人物です。
(一説には軍神アレスの娘とも)

そんな彼女の所有する腰帯を、何故持ち帰る必要があったのかというと
「依頼主の娘が欲しがったから」
だったそうです。

ヘラクレスとしても、十二を数える勤めの中でも
トップクラスにやる気が湧かない一件だったのではないでしょうか。
十二の功業⑩:ゲリュオンの牛
『怪物ゲリュオンの飼っている牛を奪い取れ』
第十の勤めは、動物の生け捕りです。
牛が目的となる点では第七の勤め「クレタの牡牛」と似ていますが、
今回は生け捕り対象の牛ではなく、その飼い主の方が怪物という違いがありました。
「ゲリュオンの牛」とは、三つの頭と三つの上半身を持つ怪物ゲリュオンが飼っていたとされる
赤い牛(+他の牛の群れ)のことです。
今回の目的である牛は、色こそ珍しいものの、特に怪物だったりという描写は無いらしいのですが、
代わりに飼い主が三頭三体の怪物ゲリュオンで、番犬が双頭の怪物オルトロスということから、
牛以外の点で脅威が盛り沢山な勤めであったそうです。

怪物と対峙したことも、怪物以外の難題を課されたこともあるヘラクレスですが、
一度に両方を相手取るのは十回目にして初の展開ですね。

一説には、道中で太陽神を相手に一悶着するエピソードもあるそうなので、
それも含めると実に多様なメンバーが登場する一件だったみたいです。
十二の功業⑪:ヘスペリデスの黄金の林檎
『ヘスペリデスの園になっている黄金の林檎を持ち帰れ』
第十一の勤めは、再度のお使いです。
前回のお使いである第九の勤め「アマゾンの腰帯」でもそうでしたが、
この手の話は、目的の物品自体ではなく、その所在に関して難しさがあるケースが多いみたいです。
「ヘスペリデスの園」というのは、ギリシャ神話におけるニンフ(精霊)達が住まう土地のことです。
そこには女神ヘラの果樹園が作られていて、
その果樹園の中に今回の目的である黄金の林檎がなる樹があるのだと言われています。
黄金の林檎については一応果物らしく、毒があったり爆発したりといった問題は無いのですが、
果樹園には門番として怪物ラドンが配されている上に、そもそも果樹園自体が女神ヘラの所有物ということで、
林檎以外の部分には問題しかないという厄介すぎる勤めであったみたいです。

特にヘラクレスの場合、
女神ヘラからは(一方的に)目をつけられている身の上ですからね。

怪物とか距離とか関係なく、純粋に行きたくない一件だったのではないでしょうか。
十二の功業⑫:冥界の番犬ケルベロス
『怪物ケルベロスを生け捕りにせよ』
第十二の勤めは、怪物の生け捕りです。
「冥界の番犬ケルベロス」とは、ギリシャ神話に登場する三つ首の犬の怪物で
その呼び名の通り冥界において番犬を務めているとされる存在です。
ファンタジー界隈でも非常に有名な怪物なので、
おおよその造形がイメージできるという方は多いのではないでしょうか。
そんな有名人(犬?)を連れ帰ることが今回ヘラクレスに課された勤めでしたが、
幸いなことに飼い主である冥府神ハデスがヘラクレスの事情を把握しており、
「傷つけたり死なせたりしない」という条件で連れ出す許可が出たため
比較的無難に目的が達成できたそうです。

当然ですが、冥府神ハデスが図ってくれた便宜は連れ出しの許可だけなので、
怪物ケルベロスの生け捕りそのものはヘラクレスの独力です。

つまり、生け捕りに際して妨害が発生しなかったというだけのことなのですが、
それでも進行が無難に思えてしまうのは、何ともヘラクレスらしいと言いますか。
以上、今回は十二の功業について紹介させていただきました。
数が多いので、ひとつひとつの紹介は結構あっさりしていますが、
細かく追っていくと、本来はそれぞれがもっと多くの設定のある逸話です。
個別の逸話については、次回以降で別々に記事にさせていただこうと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
また他の記事でお会いいたしましょう。
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