さらっと「アウゲイアスの家畜小屋」~十二の功業 その⑤~

初訪問の方は、はじめまして。

他の記事から見てくださっている方は、こんにちは。

さらっと納得を目指す本サイト「さらとく」。

第17回記事となります。

以前の記事で書かせていただいた通り、

2021年最初のテーマは「十二の功業」についての一連の記事です。

前回の最後にありますように、今回は

第五の功業「アウゲイアスの家畜小屋」について紹介させていただきます。


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どうして「十二の功業」やってるの?

英雄ヘラクレスの代名詞とも言える「十二の功業」ですが、

決して成り行き任せで始まったわけではありません

数々の無理難題を課されながらも律儀に勤めを果たし続けたのには、

ヘラクレスなりに切実な事情があってのことだとされているそうです。

以前の記事でも書かせていただきましたが、

ヘラクレスの抱える事情というのは、端的に言えば「罪滅ぼし」です。

女神ヘラの介入により正気を失ったことで起こしてしまった事件について、

その罪を償うべく光明神アポロンの神託を受けて始まったのが

「十二の功業」と呼ばれる難行だったそうです。

・・・が。ここで問題発生。

「十二の功業」の切っ掛けとなった光明神アポロンの神託ですが、

その内容はちょっと雑なものだったらしく、

罪滅ぼしに関して「具体的に何を為すべきか」については言及してなかったそうです。

神託で告げられたのは

  • 誰の下で
  • いくつの勤めを果たすか

という2点。これだけ

つまり「十二の功業」には

神託を下した光明神アポロンとは別に人間の雇い主が存在します。

雇い主として指定された人物の名前は、エウリュステウス

当時ミケーネ&ティリンスという土地を支配していた王とされる人物です。

※イメージ図

このエウリュステウス王ですが、実はヘラクレスとの間にかなりの因縁のある人物

ヘラクレスに対して恨みがあるわけでは無いものの
ヘラクレスが健在だと気が休まらない

という実に複雑な立場であったとされているそうです。

そんなエウリュステウス王なので、

ヘラクレスに10個、好きに仕事を課していいよ byアポロン神

とのお墨付きをいただいてしまったことで、

これ幸いと私情挟みまくりで難題を課すことになります。

要するに、エウリュステウス王の課す勤めには

表向きの名目と個人的な裏事情がもれなくセットで存在していたそうです。

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今回の目的

<strong>エウリュステウス王</strong><br><strong>(<span class="has-inline-color has-blue-color">表</span>)</strong>
エウリュステウス王
()

アウゲイアス王が飼ってる牛の小屋を掃除してきて。

期限は一日ね。

第五の勤めは、牛小屋の掃除です。

何かと荒事に関わりがちなヘラクレスとしては、珍しく穏当っぽいお仕事ですね。

ただ、いくら仕事の内容が掃除とは言え、現在のヘラクレスは「十二の功業」真っ最中。

そして、当然勤めを指示したのがエウリュステウス王となれば、

実際の難易度はお察しと言ったところです。

<strong>エウリュステウス王</strong><br><strong>(<span class="has-inline-color has-red-color">裏</span>)</strong>
エウリュステウス王
()

怪物退治に関して無敵でも、所詮は狩人。
家事はダメ・・・だと思う、多分。

「慣れない掃除に手間取って、納期に間に合わず勤め失敗」

これでいこう。

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アウゲイアスの家畜小屋とは?

アウゲイアスの家畜小屋」とは、

読んで字のごとくアウゲイアスという名の人物がを飼っていた小屋のことです。

言い換えると、アウゲイアスさん家の牛小屋ですね。

さらっとアウゲイアスさん

アウゲイアスというのは、当時のエーリスという土地のです。
今回は「十二の功業」の一環として登場していますが、
別の時期にはヘラクレスを含めた勇士と共に、船旅で冒険に出たこともあるそうです。

ここまでならば、単なる王様所有の牛小屋なのですが、

十二の功業」のひとつに採用されるだけあって、やっぱり難儀な事情がありました。

特徴①:牛の数が凄い

アウゲイアス王が所有していた牛の数については諸説あるのですが、

少ないパターンでも数百頭

多いパターンでは3000頭にも及ぶ頭数を飼っていたとされているそうです。

酪農するにも限度があると思える頭数ですが、

飼っている牛の数が多いということは牛小屋のサイズも相応に大きいということであり、

それはそのままヘラクレスに課される掃除の量(一日分)とイコールとなります。

もうこの時点で嫌気が差しそうなレベルですね。

特徴②:物凄く汚れてる

今回最大の問題点。

アウゲイアス王の所有する牛の頭数が多いことも、

牛小屋のサイズがそれに応じて広大であることも、

それぞれ掃除に手間がかかる要因ではあります。

が、これだけでは単純に「メッチャ広い牛小屋」でしかありません。

何が何でもヘラクレスに勤めを失敗してもらいたいエウリュステウス王が、

数ある牛小屋の中から「アウゲイアス王の牛小屋」を選び出したのには、

それが他の牛小屋にはない、唯一無二の特徴を備えていたからだとされているそうです。

その特徴とは何か?

実は、このアウゲイアス王の牛小屋、

30年間一度も掃除されたことがありません

マジです。

『世界一汚い場所として知られていたそうです。

早い話が汚部屋ですね。それも30年物。

神話に語られるレベル」と言い換えれば、確かにすごいのかもしれません。

が、正直あまり言及したくないです。

ともあれ、少なくとも「難題」と呼ぶに不足は無いでしょう。

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vs.アウゲイアスの家畜小屋

経緯はさておき。

事情もさておき。

アウゲイアス王の牛小屋を掃除することになったヘラクレス

とは言え、ここまで年季の入った牛小屋です。

普通に洗ったところで、期限の一日で終わるわけもありません。

そんな、これまでとはベクトルの異なる難題を前に

ヘラクレスが採った作戦がコチラ。

Q.物凄く汚れている家畜小屋を一日でキレイにしたいです。どうしますか?

A.勢いよく水をかけて流します。

意外と普通の発想でした。

実際、布とかでこすってどうにかなるレベルでもありませんし、

水の勢いで洗い流すというのも、中々現実的な方法だと思います。

という訳で、実際にヘラクレスの取った行動がコチラ。

①小屋の壁(土台という説も)に穴を空けます

②近くの川2つの流れを強引に変えます

③川から引いた水の勢いで小屋の汚れを洗い落とします

やっぱりヘラクレスはヘラクレスでした。

というわけで、いささか力ずくではありましたが、

こうして首尾よく一日で牛小屋の掃除を終えたそうです。

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その後の顛末

実は今回の勤めにおいて、

ヘラクレスは牛小屋の掃除をする前に、

牛の持ち主であるアウゲイアス王とひとつ約束をしていました。

『一日で小屋の掃除を終えたら、
報酬に貴方の所有する牛の一割を頂きたい。』

これに対してアウゲイアス王は

「そんなこと出来るはずが無い」と高を括り、

この要求を受け入れたそうです。

その後、ヘラクレスは宣言の通りに一日で牛小屋の掃除を終えましたが、

約束したはずのアウゲイアス王は、報酬を渡す段になって知らぬ存ぜぬを決め込んだとされています。

一方、本来の雇い主であるエウリュステウス王

<strong>エウリュステウス王<span class="has-inline-color has-blue-color"></span></strong>
エウリュステウス王

いや、罪滅ぼしのために仕事してるのに、別口で報酬を要求するとかダメでしょ。

として、今回の勤めはノーカウントとしたそうです。

この時の裁定については、割と筋は通っている気もしますね。残念ですが。

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後日談

十二の功業」にまつわる話はここまでですが、

ヘラクレスアウゲイアス王との関係は、更に後日談があるそうです。

牛小屋の一件の後、

紆余曲折を経て無事に「十二の功業」を達成したヘラクレス。

全ての勤めを終えて、エウリュステウス王との雇用関係も無くなり、

一個人としての日々に戻ったヘラクレスでしたが、

勤めに励んだ当時のあれこれはしっかり覚えていました。

もちろん、「十二の功業」に関わった全ての人物に因縁があるわけではありませんが、

事情があったとはいえ、強引に約束を反故にしたアウゲイアス王のことは許しておらず、

後に改めて訪ねて行ったそうです。

軍勢を引き連れて。

その後、ヘラクレス側もアウゲイアス王の側も色々ありましたが、

最終的にアウゲイアス王の治める都市ごと牛を手に入れたそうです

ちなみに、この時のヘラクレスにとって目的はあくまで報酬の牛だったようで、

都市の方は以前報酬で揉めた際に自分に味方してくれたピュレウス(アウゲイアス王の息子)へ

返したそうです。

恩も恨みも忘れないというヘラクレスの執念深さを示すエピソードのひとつですね。


以上、今回は「十二の功業」より「アウゲイアスの家畜小屋」について紹介させていただきました。

次回は、第六の功業「ステュムパリデスの鳥」についてとなります。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

また他の記事でお会いいたしましょう。

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