さらっと「ディオメデスの怪馬」~十二の功業 その⑧~

初訪問の方は、はじめまして。

他の記事から見てくださっている方は、こんにちは。

さらっと納得を目指す本サイト「さらとく」。

第20回記事となります。

以前の記事で書かせていただいた通り、

2021年最初のテーマは「十二の功業」についての一連の記事となります。

前回の最後にありますように、今回は

第八の功業「ディオメデスの怪馬」について紹介させていただきます。


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どうして「十二の功業」やってるの?

英雄ヘラクレスの代名詞とも言える「十二の功業」ですが、

決して成り行き任せで始まったわけではありません

数々の無理難題を課されながらも律儀に勤めを果たし続けたのには、

ヘラクレスなりに切実な事情があってのことだとされているそうです。

以前の記事でも書かせていただきましたが、

ヘラクレスの抱える事情というのは、端的に言えば「罪滅ぼし」です。

女神ヘラの介入により正気を失ったことで起こしてしまった事件について、

その罪を償うべく光明神アポロンの神託を受けて始まったのが

「十二の功業」と呼ばれる難行だったそうです。

・・・が。ここで問題発生。

「十二の功業」の切っ掛けとなった光明神アポロンの神託ですが、

その内容はちょっと雑なものだったらしく、

罪滅ぼしに関して「具体的に何を為すべきか」については言及してなかったそうです。

神託で告げられたのは

  • 誰の下で
  • いくつの勤めを果たすか

という2点。これだけ

つまり「十二の功業」には

神託を下した光明神アポロンとは別に人間の雇い主が存在します。

雇い主として指定された人物の名前は、エウリュステウス

当時ミケーネ&ティリンスという土地を支配していた王とされる人物です。

※イメージ図

このエウリュステウス王ですが、実はヘラクレスとの間にかなりの因縁のある人物

ヘラクレスに対して恨みがあるわけでは無いものの
ヘラクレスが健在だと気が休まらない

という実に複雑な立場であったとされているそうです。

そんなエウリュステウス王なので、

ヘラクレスに10個、好きに仕事を課していいよ byアポロン神

とのお墨付きをいただいてしまったことで、

これ幸いと私情挟みまくりで難題を課すことになります。

要するに、エウリュステウス王の課す勤めには

表向きの名目と個人的な裏事情がもれなくセットで存在していたそうです。

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今回の目的

<strong>エウリュステウス王</strong><br><strong>(<span class="has-inline-color has-blue-color">表</span>)</strong>
エウリュステウス王
()

トラキアのディオメデス王が4頭の馬を飼ってるらしいんだけど、

これを4頭とも連れてきて。

当然だけど、生け捕りね。

第八の勤めは、怪物の生け捕りです。

最近生け捕り多いですね。

今回も、例によって生け捕りにする理由は語られていないパターンです。

捕えた後に捧げものにでもしようと思ったのか、

あるいは単純に退治するだけでは簡単すぎると考えたのか。

可能性はいくつかあるものの、

エウリュステウス王自身が口にしていないので、真相は闇の中ですね。

まぁ、エウリュステウス王の立場とか考えると、こんな感じではないでしょうか。

<strong>エウリュステウス王</strong><br><strong>(<span class="has-inline-color has-red-color">裏</span>)</strong>
エウリュステウス王
()

馬っていうのは嘘じゃないよ。ちょっと人を襲う怪馬ってだけで。

隠してないし、言い忘れただけだし。

ついでに喰われてしまえとか思ってないし。

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ディオメデスの怪馬とは?

ディオメデスの怪馬」とは、

トラキアという土地の王であるディオメデス王が飼っていたとされる4頭の馬のことです。

さらっと豆知識

トラキアというのは、現在のバルカン半島あたりの地域名です。
今日でもトラキアという名称は使用されますが、地理的には
現在のギリシャブルガリアトルコの三国に分割される形となっているそうです。

冠に人名が入っているという意味では、第五回の「アウゲイアスの家畜小屋」と同じですね。

つまり、端的に表現すれば

ディオメデスさんちのお馬さん

です。

言い伝えでは、巨大な体躯獰猛な気性

何より、人を喰らうという危険な特徴を持った怪物のような馬だったとされているそうです。

特徴①:実は飼い馬

ディオメデスの怪馬」は、

その通称に人名(ディオメデス)が入っていることからも分かるように、

この界隈では珍しい飼い主がいるタイプの怪物的存在です。

似たようなパターンとしては前回の「クレタの牡牛」がいますが、

こちらは「元はミノス王の手元にあった」というだけで実際はミノス王の手に負えておらず、

ヘラクレスが挑んだ時点では野良も同然の怪物でした。

対して、今回の「ディオメデスの怪馬」は本当にディオメデス王の飼い馬だったらしく、

青銅製の飼葉桶鉄製の鎖といった専用の道具こそ使用していたもの、

一応はディオメデス王の管理の下で飼育出来ていたとされているそうです。

特徴②:飼い主に問題あり

ディオメデスの怪馬」と呼ばれる4頭の馬たちが、

色々と変わった特徴はありつつもディオメデス王の手元で飼育されていたのは前述の通りです。

となると、当然湧いてくる疑問がひとつ。

『なぜ飼われている馬なのに人を襲うことで有名なの?』

普通飼い主がいるなら、他人様に迷惑をかけないようにするのはマナーですからね。

それを踏まえて、この疑問に対する回答はこちら。

『飼い主がそう仕向けているから』

実にシンプルですね。悪い意味で。

何を隠そうこのディオメデス王、自分の飼っている馬に対して

自分の王宮を訪れた旅人を襲え

と教え込んでいたと言われているのだとか。ひどい飼い主もいたものです。

馬より先に飼い主捕まえた方が良い気がしますよね。。。

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vs.ディオメデスの怪馬

というわけで、極めて問題のある飼い主がいるものの、

一応は指示された通り「ディオメデスの怪馬」を捕えにいくことになったヘラクレス

ただ、いつもの野良怪物と違って、

今回のターゲットは曲がりなりにも王の飼い馬

ある意味では、国に喧嘩を売るようなものです。

ヘラクレスもそのあたりを懸念したのか、

今回は大勢の勇士を引き連れてディオメデス王の治めるトラキアへ向かったと言われています。

まぁ、単純に航海するための人員が必要だっただけかもしれませんが。

さらっと豆知識

ヘラクレスの出発地点、つまりエウリュステウス王の領地であるミケーネorティリンスペロポネソス半島
対して今回の目的地であるトラキアバルカン半島にあります。
これらの地域は海を隔てた地域なので、移動のためには船による航海しか無かったわけですね。

そうして、首尾よくトラキアへ到着したヘラクレス一行。

早速今回の標的である「ディオメデスの怪馬」を確保すべく、行動を開始します。

とはいうものの、普通の馬とかけ離れているとはいえ

基本的には「気性の荒い馬×4」に過ぎないため、

生け捕り自体はさしたる問題も無くあっさり終わったそうです。

一説によると、トラキアへ向かうヘラクレスは、
その途中でアルケスティスという女性を助けたりしていたと言われています。

今回の件には関係無いので一旦置いておきますが、
こちらのエビソードについてもいずれご紹介したいところです。

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vs.ディオメデス王

こうして無事に「ディオメデスの怪馬」の生け捕りに成功したヘラクレス

目的を果たした以上、もはやトラキアに用は無く、あとは帰るだけなのですが、

そう易々と帰すわけにいかないのが、馬の持ち主であるディオメデス王です。

自分の馬が持ち去られたことを知ったディオメデス王は、

馬を取り返すべく、こちらも手勢を率いて、

帰還しようとするヘラクレス一行を追いかけてきました。

Q.馬の持ち主とその手勢が追いかけてきました。どうします?

A.分かった。ちょっと止めてくる。皆は先に行ってて。あと馬預かっておいて。(((`・ω・´)

そんな感じの、今ひとつ緊迫感の無い流れでディオメデス王一行の相手を買って出たヘラクレス

順当に考えれば、人数差でヘラクレスの不利は明らかなのですが。

やっぱりと言うべきか、ヘラクレス圧勝

総大将であるディオメデス王討ち取って、無事に帰ってきたそうです。

まぁ、この頃のヘラクレスって色々持ってますからね。
毛皮とか、毒矢とか。

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その後の顛末

こうして、馬の生け捕りに続いて、飼い主の討伐まで果たしたヘラクレス

目的は果たし、追手も無く、今度こそ帰還するだけとなりました。

が、ここで予想外の問題が発生。

先のディオメデス王一行と戦った際、

ヘラクレスは、捕えた4頭の馬を自分の従者であるアブデロスに預けていました。

その後の展開は前述の通りで、

ヘラクレスディオメデス王一行を相手に無双していたのですが、

残された従者アブデロスにとって「ディオメデスの怪馬」は手に余る相手だったらしく。

戦いを終えてヘラクレスが戻ってみると、

従者アブデロスは怪馬に襲われて命を落としてしまっていたそうです。

ヘラクレスにしてみれば「軍勢と戦う」という危険な役割を買って出た行動なのでしょうが、
怪物的な馬4頭を御する」というのも、普通にできることではなかったのでしょうね。

自らの従者の死を知ったヘラクレスは深く悲しみ、

従者アブデロスを埋葬した上で、

その近くに従者の名前にちなんだアブデラという都市を造ったのだと言われているそうです。

ちなみに、このアブデラという都市ですが、現在でも存在します

※現在ではアヴディラと呼ぶそうです。

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更にその後の顛末

こうして、紆余曲折ありながらも「ディオメデスの怪馬」を連れ帰ったヘラクレスは、

いつも通りに、馬を依頼主であるエウリュステウス王に引き渡します。

実はこの頃には、ちょっとした事情もあって、4頭の怪馬たちはすっかり大人しくなっていたのですが、

手元に置くのも危ないと思ったのか、エウリュステウス王は馬を放逐またか。

その後、放逐された4頭の馬たちは

オリュンポス山にて、野の獣たちによって仕留められたと言われているそうです。

(一説には主神ゼウスの手引きがあったとも)


以上、今回は「十二の功業」より「ディオメデスの怪馬」について紹介させていただきました。

次回は、第九の功業「アマゾンの女王の腰帯」についてとなります。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

また他の記事でお会いいたしましょう。

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