
初訪問の方は、はじめまして。
他の記事から見てくださっている方は、こんにちは。
さらっと納得を目指す本サイト「さらとく」。
第18回記事となります。
以前の記事で書かせていただいた通り、
2021年最初のテーマは「十二の功業」についての一連の記事となります。
前回の最後にありますように、今回は
第六の功業「ステュムパリデスの鳥」について紹介させていただきます。

どうして「十二の功業」やってるの?
決して成り行き任せで始まったわけではありません。
数々の無理難題を課されながらも律儀に勤めを果たし続けたのには、
ヘラクレスなりに切実な事情があってのことだとされているそうです。
以前の記事でも書かせていただきましたが、
ヘラクレスの抱える事情というのは、端的に言えば「罪滅ぼし」です。
女神ヘラの介入により正気を失ったことで起こしてしまった事件について、
その罪を償うべく光明神アポロンの神託を受けて始まったのが
「十二の功業」と呼ばれる難行だったそうです。
・・・が。ここで問題発生。
「十二の功業」の切っ掛けとなった光明神アポロンの神託ですが、
その内容はちょっと雑なものだったらしく、
罪滅ぼしに関して「具体的に何を為すべきか」については言及してなかったそうです。
神託で告げられたのは
- 誰の下で
- いくつの勤めを果たすか
という2点。これだけ。
つまり「十二の功業」には、
神託を下した光明神アポロンとは別に人間の雇い主が存在します。
雇い主として指定された人物の名前は、エウリュステウス。
当時ミケーネ&ティリンスという土地を支配していた王とされる人物です。

このエウリュステウス王ですが、実はヘラクレスとの間にかなりの因縁のある人物で
ヘラクレスに対して恨みがあるわけでは無いものの
ヘラクレスが健在だと気が休まらない
という実に複雑な立場であったとされているそうです。
そんなエウリュステウス王なので、
ヘラクレスに10個、好きに仕事を課していいよ byアポロン神
とのお墨付きをいただいてしまったことで、
これ幸いと私情挟みまくりで難題を課すことになります。
要するに、エウリュステウス王の課す勤めには
表向きの名目と個人的な裏事情がもれなくセットで存在していたそうです。
今回の目的

(表)
ステュムパロス湖ってあるでしょ。
その湖畔に迷惑な鳥が住んでるらしいから、退治してきて。
第六の勤めは、怪物退治です。
最近は生け捕りや掃除が続いていましたが、今回は普通に退治のパターンですね。
ここ数回では珍しく、
退治するにあたっての条件や、達成までの期限が切られるといった制限の類が無いため、
比較的取っつきやすい勤めだったと思われます。
とは言え、取っつきやすくとも勤めは勤め。
エウリュステウス王なりに、ヘラクレスに失敗してもらうためのポイントはあった様子です。

(裏)
「鳥」って言ったけど、正確には「鳥の群れ」ね。
結構な数がいる上に、元々は軍神アレスのペットらしいし、
そんな怪鳥に囲まれれば、さすがに数で押せる・・・はず。
ステュムパリデスの鳥とは?
「ステュムパリデスの鳥」とは、
ステュムパロス湖という湖の畔に住んでいたとされる鳥の怪物です。
「シンプルに強い」というタイプの怪物ではないのですが、
毒性の排泄物で田畑を荒らしたり、近隣の住民を襲ったりと、
悪い意味で地域に根付いた被害をもたらしていたらしいですね。
特徴①:金属製の身体部位
住み着いた地域に被害を出すだけであればまだ「鳥」の範疇とも言えますが、
「ステュムパリデスの鳥」はただの鳥ではなく、歴とした怪物です。
その証のようにして、この「ステュムパリデスの鳥」は
通常の鳥ではあり得ない金属製の身体部位を備えていたと言われています。
具体的には、鳥としての身体の内、
- 翼の先
- 爪
- クチバシ
が青銅で出来ていたそうです。
通常の鳥類でも攻撃に使うような部位が、
事もあろうに金属製。
飼い主(軍神アレス)の影響を受けたという訳でもないでしょうが、
何とも攻撃的な特徴ですね。
特徴②:集団を形成している
「ステュムパリデスの鳥」の持つ希少な特性。
先の項目でも述べましたが、
「ステュムパリデスの鳥」は鳥ではなく鳥の形をした怪物です。
当然、鳥らしからぬ特徴を備えていても「怪物」として考えれば不思議ではないのですが、
一方で「怪物」という割には鳥に近しい存在だったのか、
怪物でありながら、鳥のようにして同種で集団を形成して生活していたそうです。
実はこれ、怪物界隈で考えると結構珍しい性質だったりします。
過去の「十二の功業」で登場した面々と比較すると分かりやすいのですが、
基本的に「怪物」と呼ばれる存在は、単独で行動していることが多いです。
例外的に「ケリュネイアの鹿」が元々は数体の同種がいたと語られていますが、
それでも合計して4体。
対して、「ステュムパリデスの鳥」が形成しているのは同種の群れ。
「質より量」を地でいく、これまでと真逆のコンセプトと言えますね。

ちなみに、本種の呼称にある「ステュムパリデス」という単語は複数形の表現なのだそうです。

つまり、呼び名の時点で「数」という性質ありきの存在だったんですね。
vs.ステュムパリデスの鳥
こうして、湖畔の怪物・・・怪物達と戦うことになったヘラクレス。
如何に怪物であろうと、
相手が単体であれば基本的に正面から立ち向かうのが通例のヘラクレスですが、
困ったことに今回の相手は複数どころか「怪物の集団」です。
Q.怪鳥の集団を退治したいです。どうしますか?
A.とりあえず飛び立たせて。あとは片端から射落とすから(`・ω・´)+
訂正します。あんまり困ってないかもしれません。
理由はさておき、今回ヘラクレスは鍛冶神ヘパイストスの助けを得て、
巨大な青銅製の鳴子(なるこ)を用意したのだといいます。
鳴子(なるこ)というのは、木製の板に木片や竹を取り付けた形をした道具です。
畑に近づく鳥を脅かして追い払う「鳥威し(とりおどし)」と呼ばれる農具の一種で、
本来は紐などに吊るし、田畑に設置して使用されます。
つまり、今回ヘラクレスの考えた作戦はこういう感じになります。
①鳴子でデカい音を立てる
②鳥、ビックリして飛び立つ
③射る
やってることは完全に狩猟ですね。
こうして集団のほとんどを射落としたことで、「ステュムパリデスの鳥」の退治は完了したそうです。

ちなみに、鍛冶神ヘパイストスの助力を受けたものの、退治自体は独力だったためか
今回は以前のようにノーカウント扱いにはならなかったみたいです。
以上、今回は「十二の功業」より「ステュムパリデスの鳥」について紹介させていただきました。
次回は、第七の功業「クレタの牡牛」についてとなります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
また他の記事でお会いいたしましょう。
コメント